対峙
「これはこれは」
そう言って私の目の前で立ち止まるキッド。
「お初にお目にかかります。中森警部と共に私を追わなくてよかったのですか?」
「あなたがここに戻ってくると踏んで残ってたのよ」
これははったりだ。そう気づいた瞬間に彼はやってきたのだから。
「そうでしたか。だが、この宝石が偽物だということには気づいていないようだ」
「!?」
「これはあらかじめ用意しておいた偽物。本物はまだショーケースの中ですよ」
「ショーケースには何もないけど?」
あくまで冷静を装う。
だが、警部たちは彼の手のひらで転がされていたのだ。私も含めて。
そう思うと悔しい。
「クッション部分をくり抜いて、その下に隠してあるんですよ。くり抜いたクッションを少し薄くして上に被せてね」
「なるほど?」
「これだけの警備の人数ですから」
「その割には警備の多さを利用して下準備してるじゃないの」
2016.5.30 活動停止 ちょっくら頑張ってきますわ✋🏻