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君のいない世界
投稿日:516 0 7―「御前のいない世界なんてぶっ壊れればいいのに。」
死を悟ったような顔をしている声をかければ
「そんなことしちゃダメだよ。」
と嗤う彼奴がいた。
膵臓癌のステージIVと診断された彼奴は壮絶な痛みと辛さに悶え苦しんできただろう。
それでもいつも彼奴は
「弔と話がしたいから。」
とモルヒネの投与を嫌がった。
そういつもは。
「死にたくない。生きていたい。」
と泣き噦る彼奴を見て俺は助ける唯一の方法を思いつく。
「俺が五本の指でお前に触れたら御前は簡単に塵になんって消えるだな。」
最期は笑ったままで
「こうするしかお前を助ける方法はねぇんだ。」
愛してるから許してくれよ。
その言葉と共に五本目の指が触れた―。