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「大体、なんで俺が、」
誠凛と秀徳の試合なんか見ないといけねぇんだよ……。
誠凛との試合の後の夜、一つ上の口うるさいマネジャー、美咲は木吉の見舞いに行った。
頭を下げに行ったんだろう…俺の代わりに。
戻ってきて奴は泣いた。
というより、憤激した。
「……木吉さん、泣いてたよ………。あんなに強い人なのに、声を上げて……。自分がどんな事したか解ってんの…?!」
パチーン
乾いた音がして、左頬に鋭い痛みが走った。
紛れもない、奴に平手打ちを食らったのだ。
やり返そうとも思わなかった。
単純に、ばかばかしく思えた。
……誰のための涙なんだろうと思った。
あれから、頭のどっかがすっぽ抜けた感じが止まない。
弱小校に容赦無いラフプレーを浴びせても、気に食わない奴らに罵詈雑言を浴びせても、気が晴れることはなかった。
ただただ、奴が泣くだけだった。