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第五章 《境界線》

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『ねぇ…姉ちゃん』

「ん?」

『さっき町のやつと何話してたの?』

恐る恐る聞いてみた。やはりあの言葉が頭から離れなかった。

「ヴァルト…お父様のこと覚えてる?」

今まで昔の話をしてこなかったため少し驚いた。忘れるはずがない。お父様は偉大な人だった。国のために家族のために戦に行った。戦いから帰っては来なかったけど、ずっと心の中にいたお父様。

「そうね、お父様は偉大だった

けれど、そのお父様を殺したのは、この国よ」

姉の眼から光が消えた。今まで見たことがない闇に包まれた眼だった。言葉の意味も分からないまま姉は話を続けた。

「私はお父様を殺したこの国が憎い。だから復讐と反逆の意味を込めてこのクローバーを彫ったのよ。

その話をさっきの子供たちとしていたの」

俺はこの国が好きだった。
突如として入った境界線が2人を引き裂いた。

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