ベランダ姫 ８

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バス停で降りて少し歩くと目の前に大きくそびえ立つマンションがある。
マンションのすぐ近くにある森林公園から、セミの鳴く声が響くけど、そんなこの季節が意外と嫌じゃない。
夜には、カエルの鳴き声がうるさく響いて、静けさが苦手な私は、それに助けられている。

ただいまもろくに言わずに家の中に入って、今朝、忘れていったテーブルの上の千円札を横目に通り過ぎて私は真っ直ぐに自分の部屋に入った。
カーテンを開けっぱなしにいていた窓から、夕暮れの空が広がっているのが見える。
そのままガラガラ、と窓を開けて、ベランダに出る。
ベランダにあるのは、ハーブが数種類。
夏に強いハーブを梅雨の時期にお花屋さんで見つけてから、ちょっとずつ種類を増やして育てている。
レモングラスに、バジル。
この間仲間入りしたのは、スイートマジョラム。
生でも食べられて、乾燥させてもいい香りがするよ、って。