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俺からお前に
投稿日:215 0 9廊下をコツコツと鳴らす1人分の足音。
それが自分のものだと知っているのに、
聞こえる度体を震わせてしまう程度には、ドキドキしている。
つまり、
柄にも無く…緊張、している。
自室に入れば、途端に甘い香りが鼻をつく。
朝のうちに焼いておいたアップルパイの匂いが部屋いっぱいに充満している。
洒落たポットとティーカップを用意して、ふう、と1つため息をつく。
今日の紅茶はダージリンだ。
それも、少し高価な茶葉を買った。
俺にしては…奮発したと思う。
今日はいつもより気分がよかった。
この時間が来るのをどれだけ心待ちにしていた事か。
いつもよりもずっとずっと楽しみなのだ。
そろそろ…あいつが来る頃だろうか。
そう思った矢先、まるで待ってましたとでも言うように
控えめなノック音が響いた