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櫂の横を通り、走りだす。
眼はけして合わせないように、下に視線を張り付ける。
櫂が再び私に腕を伸ばすけれど、それを避ける。
「菜々李…!」
「…、」
「悪い、」
「なにが?」
「八つ当たりした、ごめん」
そうやって。
また違う雰囲気をまとって。
分かるわけないしゃんか、
八つ当たりしたって?
何に対してなのかわからないのに。
櫂が追いかけてきて、結局また腕は捕まってしまうけれど。
それを振り返って顔を見ようとしない私。
それでも、櫂は顔を覗いてきて。
私の涙を不器用に、自分の服の袖で拭き取る。
「ごめん、」
「…やめて…っ」
「菜々李…、」
「触らないで…、そういうこと、しなくていい」
「……、」
「櫂だって、何もわかってないくせに」
「…」
「櫂だって…、私のことだって知らないじゃん」
真。(活動お休み
ゆるり。ふわり。ひらり。