【鬼つかひ】 一
桜が咲く頃、満月の夜、この木の下で会いましょう。
彼女はそう言った。
しかし、男が約束を果すことはなかった。
なぜなら男は──
それはもう、遠い昔の話。
* * *
「美(み)霊(たま)様ー」
小さな少女が駆けてくる。神社の境内には一人の巫女。ほうきを持ったその巫女に、少女は駆け寄る。
「おはようございまーす!」
元気な挨拶に美霊も答える。
「おはよう。……もう、学校?」
美霊は少女へと声をかける。
「今日は離任式で学校行かなくちゃいけない日なんです」
ランドセルを背負った少女は笑って答える。
「そうなの。気を付けて、いってらっしゃい」
いってきまーす、と手を振って駆けていく少女。その姿はすぐに見えなくなる。
「今日も良い天気ですね」
空を見上げ、美霊がそう呟いた時。
「おい」
後ろから声がかかった。
2020.12 今後画像の更新は行いません。 公式絵を使用した画像は加工無加工問わず、リクエスト頂いて作ったものも含め2020年内いっぱいです...