【鬼つかひ】 二

• 千織
• 鬼つかひ

「……誰ですか？」
美霊は、先程の少女に向けていた優しい声からは想像もできないほど冷たい声で問いかける。しかし、声の主は美霊の問いには答えない。
「あんたが美霊か？」
美霊の後ろに立った声の主は男のようだが、美霊は振り返ろうとはしない。
「あなたは？」
しかし美霊はもう一度同じ問いを繰り返す。
「……」
答える気配は、ない。
「人間ではありませんね」
目を閉じ、代わりに美霊自身が男の姿を解き明かしていく。
「あなたは私に美霊か、と問いましたが、それを知らぬということは、この地の者ではありませんね」
「……何が言いてえんだ」
静かなやり取りが、続く。
「この地の周囲には、 私が結界を張り巡らせてあります。故に、人間でないものはここには辿り着けないはず。なのに、あなたはここに来ましたね」
そして、閉じていた目を開く。
「あなたは、何者ですか」