【鬼つかひ】 三
「……チッ」
男は舌打ちをし、低い声でゆっくりと口を開く。
「……大神の鬼だと言えば、いいのか」
その名を聞いた瞬間、美霊は目にも止まらぬ早さで振り返った。美霊の漆黒の髪が空を舞い、互いの瞳に、それぞれの顔が映る。
「では……あなたが……?」
美霊の声は震えている。
男は、ただの人間の姿形を成していた。
三尺九寸ほどの美霊の背丈よりも顔一つほど高い背で、真っ黒な髪は短いがボサボサ。褐色の瞳は 不機嫌にそっぽを向いた。
その「鬼神」を、美霊はじっと見つめた。
「……んだよ」
「いえ」
聞いていた話では、大神の鬼は、白銀の髪に紅の瞳を持つということなのだが……。
「申し遅れました。私がこの地を護り治める美霊を名乗る者です」
先程までの態度はどこへやら、美霊は丁寧に頭を下げた。
すると鬼神は怪訝な顔をする。
「あんた自身の名はねえのか?」
妙なことを聞くやつだ。
2020.12 今後画像の更新は行いません。 公式絵を使用した画像は加工無加工問わず、リクエスト頂いて作ったものも含め2020年内いっぱいです...