【鬼つかひ】 四
「ありません。私は生まれた時から美霊と呼ばれています」
鬼神は知らないらしい。この地を護る、美霊が何であるかを。
美霊は人ならぬもの。この社の御神木から産まれた。人の形を成してはいるが、決して人間のように産まれたりはしない。先代の美霊が命尽きれば、次の美霊が産まれる。それを繰り返して六百年続いてきた。それが美霊の正体である。
「あなたの名は?」
鬼神は美霊の目をしばらく見つめていたが、そのうち呟くように低く答えた。
「……玄武を逆さに書いて、ムクロ」
また、変わった名だ。
「ムクロ……」
玄武を逆さから書くというのには、良くない意味が含まれていそうだ。おまけに読みは「ムクロ」ときた。
「ところで、腹が減った。何か、食い物をくれ」
ムクロは、境内を見回す。
「鬼神は、どのようなものを食すのですか?」
2020.12 今後画像の更新は行いません。 公式絵を使用した画像は加工無加工問わず、リクエスト頂いて作ったものも含め2020年内いっぱいです...