イ/ナズマ文庫
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一之瀬さんが緊迫した表情で頷き、船の中に消え、それをリカがダッシュで追っていくのを目の端で見ながら、私は吐き気で朦朧とした頭で考える。
はるかと豪炎寺さん…か。
結構お似合いかも。
「星羅っ!?しっかりして!!」
はるかが私に向かって怒鳴る。
可愛くて大人っぽい風貌からは予想もつかないような大きな声である。
「だ、い、じょぶ…」
「一之瀬先輩が戻ってくるまで吐くのは我慢できる?」
「頑張…る…うぇっ…」
「一之瀬先輩早くーっ!」
船の中程に作られた階段から一之瀬さんが顔を出す。
そして、こちらに向かってダッシュ。
後ろからリカもダッシュ。
「ちょっと星羅、しっかりしてぇな」
私はそのぼやきをスルーすると一之瀬さんから袋を引ったくって、みんなに背を向けた。
「うぇぇっ…ゲホッ…ぐはっ」
盛大に胃の中のものを吐き出すといくらかすっきりした。
「はぁ、良かった…」