イ/ナズマ文庫
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「うん、大丈夫だよ」
星羅がほっとしたように肩の力を抜いた。
僕は、立ち去ろうとする彼女の右手首を握って、耳元ギリギリに唇を近づけて囁いた。
「もっと頼っていいんだよ?星羅は僕にとって大事な人なんだから」
星羅が弾かれた様に顔をあげ、吹雪の顔を見た。
「う、うん」
顔が熱っい。まるで火が着いたみたいだ。士郎くんの吐息がかかった耳たぶが特に熱を帯びている。
私は足早にそこを去ると、みんなを探して歩き回った。
「おい、星羅!」
いきなり声を掛けられて、びっくりして振り返ると、一之瀬さんがそこに立っていた。
「顔、真っ赤だよ?熱でもあるんじゃない?」
「いえ、あの、大じょ…」
私は途中まで言って、先を続けられなくなった。
一之瀬さんのおでこと私のおでこがコツン、と当たった。
「う~ん、熱はないみたいだけど…」
一之瀬さんの顔がすぐそこにある。近すぎるって…。