イ/ナズマ文庫
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「なぜ、だと?愚問だな」
「ぐ、愚問…?」
「あぁ、そうだ。だって、なぜ打つかなんて聞かずともわかるだろう?」
そこで一旦息をきり、唇を湿して続ける。
「勝つためだ」
「そんな…、体を犠牲にしてまで、なんで、ですか…?」
「お前は間違っている。敗北に価値などない!」
「でも、体が壊れたらもうサッカーできないんですよっ!?」
「構わない。この体がどうなろうとも、俺は勝つためなら何度でも打つ!」
「そんな…っ」
佐久間先輩がこちらを向いた、その目の光を見て、私の体に電流が走った。
この感覚…あのときと同じ…
この目は、誰?佐久間先輩?いいや、恵ちゃんだ。
恵ちゃんが私を見下ろして…。
ぷつんと外との通信が途絶え、私は私の中に閉じ込められた。
恵ちゃんが目の前で、形のいい唇を歪めて笑っている。
私の体にボールが当たったのが嬉しくて、たまらないんだ。