イ/ナズマ文庫
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私は、捕われの身なんだ。
外界からの声は聞こえるし、手足だって本当は動かせる。
でも、なにもしたくない。
私が足掻けば足掻くほどに恵ちゃんとの思い出が頭をよぎっていつも私を苦しめる。
もう傷つくのは嫌だ。
士郎くんの悲しそうな顔、風丸さんの心配そうな顔、気丈に振る舞ってるけど実はすっごく心配してくれてる塔子の気持ち、全部届いてるよ。
早く返事をしなきゃって、心の中の小さな自分が叫んでるのをわざと無視して、私はからっぽを演じる。
ごめんなさい、みんな。
私のわがままに付き合わせて心配させて。
でも、もう少しだけ付き合ってください。
私の心が休息を求めてるの。
だから、もう少しだけ時間をください。
そうしたらもとの私に戻るから今まで通り戦うから。
―稲妻町―
「ふぅっ、やっと着いたな!」
「そうだな。…よし、星羅は半田のとこに行くか」
星羅が嬉しげに笑った。