イ/ナズマ文庫
投稿日:
85
0
4
0
「喋れなくなったって聞いて、本当に心配だった」
真ちゃんの声が、私を現実に引き戻していく。嫌だ。まだ、戻りたくない…。
「また…殻に篭っちゃったんじゃないか、って」
パキリ。音が聞こえる。
聞こえるはずないのに。自分の殻が割れる音なんて。
「なんで…」
掠れ声しか出ない。
真ちゃんは全てお見通しだって言うわけ?
そんな…信じられない。
「恵介の時もそうだったろ?お前、三日三晩飲まず食わずの黙り込んで…」
「……」
なんで知ってるんだろう。
それは親とコーチしか知らないはずなのに。
「なんで知ってるんだって顔してるな。まぁ、そりゃそうか」
そこで真ちゃんは言葉を切って真っ直ぐにこちらを見つめた。
「コーチに聞いたんだ。どうしても教えてほしいって頼み込んでさ」
「どうして、そこまでして知りたかったの…?」
「それは…決まってんだろ」
真ちゃんが頭を掻く。