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幸せな時こそ時間は早く過ぎていく。抱きしめていても離れていってしまうのがこの世の性。

近藤たちが江戸で一旗揚げるために武州を去って数ヶ月。
ミツバの縁談が着々と進んでいった。


そして今日がミツバと2人で過ごす最後の夜。


どんな顔をして、どんな気持ちで台所に立てばいい?いつもみたいにご飯の炊き具合や魚の焼き具合を確かめながらくだらない話をすればいい?

ぐちゃぐちゃと頭の中で色々と考えていると、ミツバがいつも以上に、穏やかな声でしおを呼んだ。

「しお、今日は私が全部夕食を作るから居間で待っていてちょうだい?」

「え…でも…」

突然の言葉に戸惑うしおを見てくすりと笑う。

「今日は私がしおに最高のご馳走を作るから。」

腕によりをかけるわよ。と自信満々に言う彼女に反論する事はできず、そのまま居間へと向かった。

台拭きで机を拭き、ふたり分の箸を向かい合わせに置きミツバを待った。

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