十二話
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初めて抱き締めた彼の肩は華奢で男なのに果実のような甘酸っぱい香りがした。
「ッ…ごめ、しろざと…」
もう少しこうさせて、と薄く朱に色づく唇が呟いた。その妖艶で儚げな光景に、"やっぱり綺麗だな"と再認識しながら抱き締める。
「もう少しと言わず、ずっと抱き締めててあげるよ?」
照れ隠しにそう言うと、彼は少し頬を赤らめて"冗談も程々にしろ"と笑いながら、腕を背中に回して。
それに答えるように、離さないように、抱き締めた。
少しすると柚也くんが必死になった顔で亜季を探しに来た。
亜季は柚也くんの声を聞くと、肩を震わせて怯え。
「…えっと、亜季に用があって……」
柚也くんの様子からすると、何となく大切な事かなと思って亜季を離した。
「大丈夫だよ、亜季」
もしもの時は、俺が守るから。
そう言うと、彼は頷いた。