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小説 短編 言いたくて、言えなくて。

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ガラス片を拾い終わったのか立ち上がる彼女を見つめる。こいつも俺の家の金につられているのかと。

全てが金で動いている。俺の周りのもの全て。
だったら、こいつには…。

「なあ、こんなことしても怒らないの?」
「……怒れる立場ではありません。」

うつむいた彼女の心情は読めない。
ただ、ひたすら止まらぬ怒りのままに口が勝手に動く。

「妨害はするのに?…はぁ、お前もさあ、どーせ金目当てだろ?」

はっ、として上げられた彼女の顔に気づかぬ俺はそのままつづける。ベッドサイドのデスクの引き出しを開けるとそこから諭吉を一束取り出す。

「ほら、これやるから……でてけよっ!!」

彼女の目の前の床に叩きつける。
シーンと静まり返る部屋。札束を見つめ続ける。
なぜか彼女の顔は見られなかった。顔を上げることができなかった。
すでに胸が痛む。後悔の痛みだ。

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