沖神
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じゃあ、あいつは裏切ったんじゃねぇのか。オレを捨てたんじゃねぇのか。本気で好きだったと思うアルーいつかチャイナがそう言ってくれたように。
信「みんなあなたの気持ちは取りこぼさずわかってる。お姉ちゃんも、きっとあなたのお母さんも」
手で覆った視界に鮮やかな赤が見える。赤いマフラーをしたミツバのきらきらした笑顔が。赤いアイマスクを洗濯するオフクロの子どもみたいな笑顔が。指の隙間から温かい涙がこぼれ落ちる。ミツバの代わりに。オフクロの代わりに。罪から逃れるために。償いをするために。自分を許すために。オレは弱い誰かを見つけて「大丈夫」と言い続けた。その言葉が欲しかったのはオレ自身だったのに。
ーガンバレッ。お前なら絶対、絶対大丈夫アル。
ああ、チャイナの声が聞こえる。今井がにこりと笑った。ミツバが。オフクロが。もう縛られることも、許しをこうこともないんだと。ありがとう、と彼女らは言ったようだった。