2
食指を唆られ扉を開く。落ち着いた店内、流れる緩やかな音楽。雰囲気は悪くない。…思い出の店に似たバーだ。
カウンターに座ろうとして、はたと気付く。
見知った背中が、カウンターの隅で伏していた。
「…与謝野、先生?」
「……」
僅かに見える耳は朱に染まり、乱れた服や姿勢からも彼女が既に相当酔っている事が見て取れる。
彼女は探偵社の中でも可也の酒豪だ。実際私も彼女がここまで酔った様子を見たことなどない。
…理由は明確だったが。
「お隣、宜しいですか?」
彼女は顔を上げることなく手を振った。
それを了承と捉えて席に着く。
「…だざい」
掠れた声で、先生は私の名を呼んだ。
胸の奥が軋む。痛みと、甘さに。
私とて辛いのだ。久々の感覚でもあったが…何より苦しい。想い人が、苦しんでいる姿が。
「…妾の事が嫌いなのかねェ…」
追っても追っても、妾の手から逃げていく。
2021/01/26更新 【PROFILE (雑)】 名前 お好きなように(( 誕生日 8/1 青い鳥 @Ra_Bi_3 取説 チキンです🐔 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ 【諸連...