１０

しばらく私は時間が経つのを忘れて音の世界に浸っていた。

目を閉じたまま、ずっと。

すると、何かが唇に触った。

…何？

しばらくしてから、それが直樹の唇だと気付いた。

短めのキスが妙に長く感じられ、２つの唇が離れた後も少しの間身動きが取れなかった。

「…直…樹…？」

目の前にあるのは、顔を少し赤くした直樹の顔。

夢かと思った。
現実じゃないと思った。

「…好きだよ。恵美」

訳もなく涙が溢れた。

「…っ！ごめん！そんなに…」
「へへっ…ううん。嬉しいな…」

初キス。直樹との。

「ずっと一緒にいたいな…」
「…うん。俺も」

私はこの日から雨が大好きになった。

直樹のおかけだよ。

なんでも特別に変えるんだよね。

大好きだよ。