限界,決壊。拾
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玄関でしゃがみ込み,二人で黙々と菓子を拾う。
静かな空間に響くビニール袋の音はやけに響いた。
最後の一つに手を伸ばしたのはほぼ同時,その菓子を掴み上げた睦月の手を本居が握る。
「…ねー睦月」
何時もよりも低い声は若干震えている気がして,睦月に伝わる体温は冷たい。
それでも自分の方へ顔を向けた睦月をしっかりと見つめて,本居は言った。
「…今日持ってた可愛い袋はカノジョから?」
「…は?」
袋と彼女。
一瞬繋がらなかったその言葉に睦月は首を傾げる。
ややあって思い至ったのは午前中の出来事。
睦月はその手に可愛らしい袋をぶら下げて一人帰路に着いていた。
睦月を呼び出したのは近所に住む従姉妹で,彼氏とのデートの時間まで付き合えと言われたのだ。
袋の正体はその場でついでにと渡された家族チョコである。
実蓮
ふわふわぱりん。 そんな心の本の虫。 文字をむしゃむしゃ音をぱくぱく。