no title
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俗に言う、一目惚れだったのだと今では思う。
とにかく、言葉にならない何かが体中に一気に溢れて、弾けた。
目の前がチカチカして、彼を直視する事もできないほど動揺して、息苦しくて。
ここから今すぐ離れなければと直感した。
足はまったくと言っていいほど動いてくれなかったが。
「…たまにね、どうしようもない焦燥感にかられるんです。」
俺の内心を知ってか知らずか、(いや知らなかっただろうが)彼は苦しそうに自分の胸を掴んだ。
「俺は何をしてるんだろう。どうしてまだここにいるのかって…」
おかしい、彼の一人称は“私”であったはずなのに。
しまいには、先程までの笑顔さえ消えてしまっていて。
おかしい、初対面だというのに。
何も知らない相手なのに、こんなにも。
笑ってほしい、笑わせてやりたい。
そんな事を、俺は。