no title
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「男がこんな事言うのはおかしいと思います、思うんですけど」
初対面である貴方に、今からとても気持ちの悪いことを言います。
前置きをした彼は、「嫌でしたら、すぐにここを去ってください」と言葉を続けた。
「…かまわない」
頭で考えるよりも先に口をついて出たのは、たったそれだけ。
息苦しさとか、すくんだ足とか、どうしようもない恐怖感とか。
足を踏み入れてはいけないと、赤信号ははっきりと点されていたのに。
俺の返しに、彼はますます苦しい顔をして。
「…俺を…ここから攫って行ってくれませんか」
どこまでも、遠くへ。
気づいた時には、パーティーも仕事も全てを放り出して走っていた。
エレンの手を引いて。