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紫原「凛ちん……!」
走りながら思う。
凛ちんが秋田に行って、俺が東京にいた頃――凛ちんは何を考えていた? 何をしていた? 誰と一緒にいた?
凛ちんが秋田に行ってしまったのは、父親のせいだった。
末期ガンで、秋田で療養する為に行って。
秋田で死/んで、凛ちんは一人で見知らぬ土地に取り残された。
東京にいた頃の俺は、そんなこと知らなかった。
今だって、隣にいるのに――側にいるのに、凛ちんのことを知らなかった。
凛ちんには凛ちんの物語があって、俺には俺の物語がある。
俺は凛ちんの物語を知らないし、凛ちんは今回の試合を見てないから何も知らない。話してないから知るわけがない。
もっと凛ちんと話をすれば良かった。
俺が誘って同じホテルに泊まっていたのに、俺たちはあんまり会わなかった。今思えば、無理をしてでも会いに行けば良かった。
後悔は、消えなかった。
゚・*:.。.*.:*・゚.:*・゚*゚・*:.。.*.:*・゚.:*・゚*゚・*:.。.*. 代表作(合計604作) *黒子のバスケ 《モノクロ*カラフル -second season-》 ...