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橙乃「ほらほらっ、そろそろ新幹線来ちゃうんじゃない?」
努めて明るく、私は征の背中を押す。これ以上話すのは別れがもっと惜しくなるだけだ。
赤司「そうだな。唯、中まで来てくれるか?」
中というのは、新幹線のホームを指しているんだろう。
橙乃「もちろん!」
征には内緒だけど、日雇いのバイトをしてお金はコツコツ貯めていたんだ。大切な人とのお別れに使わないのはもったいない。
橙乃「待っててね、今……」
赤司「ほら」
橙乃「え?」
差し出されたのは、中に入る為の切符だった。
橙乃「ちょっ……! バカバカバカ! なんで征が買ってるのよ!」
赤司「これは俺のわがままだからね」
橙乃「私の立場は?!」
こういうのが情けないんだって、征にはわからないかなぁ……。
赤司「――いいじゃないか。いずれは赤司家の人間になるのだから」
だから、そういうのはとってもずるい。
゚・*:.。.*.:*・゚.:*・゚*゚・*:.。.*.:*・゚.:*・゚*゚・*:.。.*. 代表作(合計604作) *黒子のバスケ 《モノクロ*カラフル -second season-》 ...